プリンセス、ピンクという単語からどんなお話を想像しますか?ピンクが好きな可愛いお姫様が出てくるお話?いえいえ、タイトルにだまされてはいけません!気楽に読めるちょっとおバカで愉快な冒険シリーズ「Princess Pink and the Land of Fake-Believe」全4巻を紹介します。
概要
- Scholastic Branches
- YL1.5~1.8(主観)
- 語数:約2,100~2,450語
- 全4巻。各巻72ページ、フルカラー。
- 主人公の少女が、誰もが知っている昔話によく似た不思議な世界を冒険するお話。
「Princess Pink and the Land of Fake-Believe」は、Scholastic社から出版されているBranchシリーズのひとつ。絵本からチャプターブックへと移行する時期にぴったりの、フルカラーで描かれた半分漫画みたいなお話です。
主人公はピンクが好きなプリンセス…かと思いきや、単に名前がPrincess Pinkというだけで、ピンク色もプリンセスも大嫌いな女の子。空手を習っており、好きなものは汚れたスニーカー、漫画、巨大な虫、泥の水たまりなど。シリーズは、お腹を空かせた彼女が夜中にこっそり冷蔵庫を漁ろうとするところからはじまります。ところが冷蔵庫の中はなぜか不思議な異世界に繋がっていたのです。果たして彼女は異世界を冒険して無事に帰って来られるのでしょうか!?
シリーズの特徴は、有名な童話によく似た世界を冒険するということ。4巻それぞれ、「3匹のくま」「赤ずきん」「3匹のこぶた」「ジャックと豆の木」が元ネタになっています。元ネタとどこが同じでどこが違うか探しながら読むのも楽しいですし、元ネタから変更されている部分も、思わず笑える内容です。ちょっとおバカで愉快な展開が続くので気楽に読めますし、冒険ものが好き、物語が好きという人ならきっと楽しめると思います。
フルカラーで全面に絵が描かれており、会話は全てフキダシで表現されているなど、半分漫画みたいなつくりです。字がたくさんあると「ウッ」となる人(私のことです)も、抵抗なく読めるのではないかと思います。英語も比較的平易で読みやすいですが、時々スラングというか、教科書では絶対習わないような口語表現も登場します。とはいえ、大半は絵から推測できる範囲です。
あらすじと感想
ここからは各巻のあらすじと感想を紹介します。
#1:Moldylocks and the Three Beards
- 語数:2,136語
- 元ネタ:「Goldylocks and the Three Bears(3匹のくま)」
ある晩、お腹を空かせたPrincess Pinkが家族に内緒でこっそり冷蔵庫を開けると、そこは見知らぬ世界 the Land of Fake-Believeにつながっていました。Princess Pinkはこの新しい世界で出会った少女GoldylocksならぬMoldylocksと一緒に、何か食べるものを見つけるため不思議な家に向かいます。ところがそこは3匹のBearならぬBeardたちが暮らす家でした。捕まったらスープにされ食べられてしまう!必死で逃げる2人ですが――。
コミカルな絵なので怖さはないものの、Beardsが住む奇妙な家の中を探検したり、Beardsに追いかけられたりとスリリングな展開が続き、ページをめくる手が止まりませんでした。
元ネタのお話「Goldylocks and the Three Bears(3匹のくま)」は、日本ではそこまで知名度が高くない気がします。英語圏ではメジャーなお話で色々な絵本が出ており、和訳されているものもあるようです。英語で読みたい方には、たとえば上記のような絵本が出ています。
#2:Little Red Quacking Hood
- 語数:2,306語
- 元ネタ:「Little Red Riding Hood(赤ずきん)」
冷蔵庫の中の世界 the Land of Fake-Believeに戻ってきたPrincess Pinkは、1匹のオオカミに出会います。「赤ずきん」の童話ではオオカミは怖い悪役ですが、この世界のオオカミは、パン屋の主人でとても泣き虫。赤ずきんならぬ赤ずきんアヒル(Little Red Quacking Hood)に売り物のパイを何度も盗まれてしまい、泣いているのでした。そこで2人(1人と1匹)は赤ずきんアヒルを捕まえようとしますが――。
童話の「赤ずきん」とは全く違うキャラクター設定に最初は戸惑いましたが、ストーリーが全く異なるので、完全に違うお話として楽しく読めました。1巻よりもわかりやすい英語で、難しい単語も多くありません。
#3:The Three Little Pugs
- 語数:2,432語
- 元ネタ:「The Three Little Pigs(3匹のこぶた)」
再び冷蔵庫の中の世界 the Land of Fake-Believeに戻ってきたPrincess Pinkは、2巻で知り合った泣き虫のオオカミに再会します。ところがオオカミはまた泣いていました。聞けば、3匹のこぶたならぬ3匹のパグから車を買ったところ騙されてしまい、車ではなくレモンを渡されたというのです。そこでPrincess PinkとMoldylocksは泣き虫オオカミの車を取り返すべく、3匹のパグが住む家に向かいますが――。
今回もまた元ネタとは全然違う導入で、愉快なキャラクター設定も相まってとても楽しくあっという間に読み終えました。Princess Pinkたちが3匹のパグの家を順番に訪れるという流れは元ネタと同じですが、展開が違うとこんなにも違うお話になるんですね。面白いなぁ。
#4:Jack and the Snackstalk
- 語数:
- 元ネタ:「Jack and the Beanstalk(ジャックと豆の木)」
今回もまた冷蔵庫の扉を開け、不思議な世界 the Land of Fake-Believeにやって来たPrincess PinkとクモのReggie。Moldylocksの家に行き、彼女やいとこのJackと一緒に映画を見て楽しむことにします。お腹が空いていたので、映画を見る前にまずスナックを探すことに。Jackは持っていたクリームチーズと交換で不思議なjelly beansを手に入れます。ところがあまりに不味すぎて、jelly beansを窓の外に投げ捨てたら、映画を見ている間に何かが生えてきて――。
シリーズの中で一番、元ネタの展開に忠実だと感じました。とはいえそこはこのシリーズ。ただ元ネタをなぞるのではなく、おバカで愉快なパロディに仕上がっています。難しい語もほとんどなく、サラッと読めてとても良い息抜きになりました。
全巻読んだ後の感想
まさに、息抜きにぴったり!という感じの、サラッと気楽に読めてちょっと愉快なシリーズでした。
「これがラスト!」とわかるようなシーンはなく、ふわっと終わるため、続巻が出てもよさそうな気もします。でも4巻の発売日は2016年…。きっとこれで完結ということなのでしょう。残念なのは、風呂敷を広げっ放しで終わっていること。お話自体は一話完結なので問題ないですが、たとえば男兄弟が大勢いること、クモのReggieのその後は?など、まだまだ次に繋げられそうなネタがシリーズに散りばめられていたので、回収されないままになっているのが少々残念です。